「脱炭素まちづくり」ワークショップを体験しました

 

春風学寮では、昨年度より環境保護を学びの目標の一つに掲げています。その一環として2月2日に、「脱炭素まちづくり」ワークショップというものを開催しました。これは、一般社団法人「全国ご当地エネルギー協会」が主催するもので、内容は以下の通りです。≪先ずファシリテーターが、様々なデータを基に地球温暖化の現況を30分ほど解説する。その後で、みんなで協力して町の炭素排出量を減らしていくロールプレイングゲームを行う。最後にゲーム内容をみんなで反省しながら、脱炭素社会を作っていくためにはどうすればよいのか、それを阻んでいるものが何であるか、自分たちにできることは何かを考えていく。≫ 

ところで、このゲームは非常によくできているので少し説明しましょう。プレイヤーは、様々な企業・役所・公共事業・公益法人・店長などの責任者の役割を割り当てられ、それぞれの立場から自分の持ち札(資金・人材・技術など)を利用して、他のプレイヤーと交渉しつつ、町全体の排出量削減目標を達成すべく努力します。その途中で、突然PCから地震が起こったとか、伝染病が発生したとかいった報道がなされます。プレイヤーはこれらの緊急事態に対処しつつ、炭素の排出量を削減していかなければなりません。そのプロセスで参加者の特徴が現れ、様々な事態が生じる、というのがこのゲームの基本です。

うちの寮では次のような事態が生じました。初めは多くのプレイヤーが自分の団体の利益を優先して資金や人材を出し渋ったため、なかなか排出量を削減できませんでした。しかし、終了時間が近づいて来ると、すべてのプレイヤーが自分の団体の利益を犠牲にしてでも、排出量を削減しようとしました。こうしてゲーム終了間際には、なんと町全体が社会主義国のようになっていったのです。ゲームが終わってどのくらい排出量が削減できたかをPCがはじき出し、削減目標が達成されていたことがわかると、全員が立ち上がり、拍車喝采して喜びを分かち合いました。

現実においてもこうなるでしょうか。危機が本当に差し迫ってくれば、現実においても同じようなことが起こるかもしれません。事実過去の緊急事態においてしばしば人間は自身の利害を超えて協力し合ってきましたから。しかし温暖化の問題は、危機が差し迫ってきたときには、point of no returnを超えており、もう手遅れであるということです。危機が差し迫る前に、社会のそれぞれの団体が自身の利益を犠牲にする必要がある。ここにこそ地球温暖化回避の最大の難しさがあります。今回のワークショップを通じて寮生たちはそのことを体感したに違いありません。

 

寮長 小舘美彦